【Interview】“コミュニティ作りは、「聞く」ことからはじまる”|NICで学ぶ若者たちがいま思うこと。〈前編〉

Creative Studio kokoでは2024年の夏、海外大学への進学を目指すための教育機関であるNIC International College のコンテンツ制作のためのクリエイティブガイドラインを、NICの学生の皆さんと一緒に作成しました。

NIC International Collegeは、世界の大学をトップレベルで卒業するための1年間の特別な教育プログラムを提供し、海外大学への進学をサポートする教育機関。1988年にネバダ州立大学日本校として開校されて以降、単なる留学の斡旋機関ではなく「個」を大切にする教育を掲げ、徹底した「対話型・参加型」による少人数授業で欧米スタイルの思考力や表現力を身につけられることを謳っているインターナショナルカレッジです。

海外の大学生活でも活きる英語を学ぶ時間はもちろん、年齢問わず、中学を卒業したばかりの学生から社会人まで、「本気で学んでみたい」「何か環境を変えたい」「夢を叶えたい」といった想いを持つ人達が集まる場であり、価値観でつながるコミュニティとなっています。

当初、NICの先生達から「昨今、海外への進学を考えていたり、自分がいる環境が合わないと悩んでいる人達にNICの存在を知ってもらうためにはさまざまな媒体を使った情報発信を行う必要性を感じているが、どのようにデザインやコンテンツを考えたらいいのか方針を迷っている」といった相談を受けたことからこのプロジェクトはスタートしました。

▼kokoメンバーが伴走させていただいた内容
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・全3回に渡るワークショップを設計し、学生と先生等とのプロジェクトチームをつくる
・「これまでのNIC」「これから目指したいNIC」の姿を議論し「NICならではの価値」についてイメージと言葉の認識の共有を行う。
・発信するコンテンツ制作の目的やカテゴリ、戦略の設計を行う。
・ブランドアイデンティティと今後の方針を明確にするためのクリエイティブガイドラインを制作。
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kokoでは、NICの教育方針と、既に自主的にInstagramアカウントを運営していた学生さん達の熱量に刺激を受け、先生達に一方的な方針提案をするのではなく、学生・先生達と一体となり、対話型のワークショップでNICブランドの価値定義から、コンテンツ制作の方針、クリエイティブのガイドラインの制作までを行うプロセスを提案。実行可能性を鑑みた発信や運用のための方針設計までを、一緒に行いました。

第1回ワークショップでは、ガイドライン制作のファーストステップとして、Instagramのプロフィール作成に取り掛かりました。ブランディング戦略の基礎の解説から、NICの魅力を洗い出すワークを実施。ワークでは、なぜNICは日本の学生たちにとって必要な場所だと思うのか、NICにはどんな人が集まっているのか、NICではどんな風に学べるのか、どんな雰囲気なのか、といった問いから、アイディアを付箋に貼っていき、ブレインストーミングを行いました。「本当の自分でいられる」「心の支え」「本気になれる」「生きる力がつく」などの夢・仲間・スキルが見つかるといった様々なNICの魅力が見えてきました。そんなワードからヒントを得て、最終的には『「みんなと違う」が夢の力になる』というキーフレーズを導き出しました。

私たちはガイドラインを制作する議論の過程で、お互いを尊重しながらも臆せず自分の意見を交わし、それぞれの視点を活かしながら組織の強みを言語化していくNICの学生の皆さんの姿に、なぜこんなにもスムーズにビジョンを共有できているのか?と度々問いかけることがありました。その議論がkokoメンバーにとってもとても面白く、組織づくりにも必要な視点が多いと感じたため、ワークショップの最終回でお話を聞くことに。

前編では、ありのままの自分でいられる環境とはどんな場なのか、そもそもどうやって自分らしさを見つけたのか、NIC生の等身大の声をお届けします。

“個々それぞれが自分の軸で動いている。それが心地いい。”

大谷:3回に渡るワークショップのなかで、NIC生の自分を表現する力や、NICという場所が存在することの意義を語る言語化の力、コミュニティの安心感のようなものをすごく感じました。議論の過程でも、NIC=“自分らしく頑張れる場所”といった定義にたどり着いたと思うのですが、そもそも「自分らしさ」を表現することについてみんなはどう考えていますか?自分がありたい姿でいること、それをそのままストレートに体現することって難しくない?

「自分はもともとやりたいことを何でもやっちゃう、ジャイアンみたいな子どもだったんです。でも、勉強ができたこともあり小・中と学年を重ねるにつれて、少しずつ周りから優等生キャラみたいな評価を受けるようになって。いつの間にか周りの人が見ている自分と、やんちゃでジャイアンっぽい自分のギャップがめちゃくちゃ苦しくなって、気づけば自分から全くしゃべりにいかない人になっていたんですよね。でも、NICに来たら、変な人しかいないんです。みんな個を持っていて、その環境で初めて人の評価を気にしなくても「自分のままでいけるやん」って安心したというか。今はもう最初から自分全開!で、他の人にしゃべりかけに行って、初めて会った人がいたら初めまして、名前なんて言うの?って。そういう忘れかけていた、自分の中にある無邪気さを思い出すことができた。NICに来たら自然にできるようになっちゃった感覚ですね。」

大谷:NICにくるまでは元の自分を否定される不安とか、期待に対するプレッシャーを感じていた?

「“こういう人だもんね”という周りからの期待値がものすごく高かったんです。だからいつも、何が何でもその期待値に合わせないといけないと思っていたんですよね。でもNICの人達って、あくまでも自分が軸なんです。あくまでも自分が軸だから、良くも悪くも他人にそんなに期待してないのかな。周りもそれぞれの軸で動いてる、それがすごく心地いいと感じています。」

「自分らしくあるためには余裕が必要なのかもしれない。本当はみんながみんな、自分なりの軸を持ってると思うんです。きっとNIC生が特別っていうわけじゃない。ただ、普通の学校生活って余裕が本当にないんですよ。NIC生も勉強に関しては余裕がないけれど、午前授業だったり午後授業だったりフリーな時間が意外とある。中学時代は、朝起きて急いで学校に行って、部活の朝練に出て、一日中授業を受けたあとまた部活に行く。そのほかにも課題などやらなきゃいけないことがたくさんあり、本当に気持ちに余裕がなかったんです。よい成績をとることに囚われすぎて、周りが見えなくなっていた気がします。」

「NICではみんな個を大切にしていていて、だからこそ期待し合わないんです。一年で留学するというミッションがあるから、自分のやりたいように勉強できるし、お互いいいバランスを保つことができる。それぞれに自分なりのやり方があるので、否定する人が誰もいないのかもしれません。」

“コミュニティ作りは、「聞く」ことからはじまる”

「NICではわたしも周りに刺激を与えられるし、周りから刺激を受けられる。以前いた高校は大学進学があたりまえで、それ以外の選択肢はないようなものでした。自分らしい道を見つけるみたいなゴールをそもそも持ってる人があんまりいないなかで、進む道のギャップに居心地の悪さをちょっと感じていて。NICだと、頑張りたい気持ちは一緒だけれど、みんなそれぞれやりたいことや目指していることが違うからお互いに成長できるんですよね。だからこそ自分らしさについて改めて実感できたなと思います。」

大谷:刺激を受けるだけじゃなくて、自分も周りに与えられてるって感覚が持てる。それってすごく大切なことだよね。

Chii:話す場だけじゃなくて、聞いてくれる環境があるっていうのは大事なのかも。自分も与えられてる気持ちになれるし、それが自信に繋がるのかな。話していくうちに、これが自分の個性かもとか、自分のいいところってここかもしれないって言語化できる。今、仕事をしている中でもそういう関係性ってすごく大切だよね。

「自分が発言したあと、必ず返事が返ってくるんですよ。その人の思っていることを伝えてくれる。聞き流されることがないから、ちゃんとわたしの話を聞いて、理解しようとしてるんだなって思えるんです。」

「自分が話すっていうのももちろん大事。だけど、 まずは聞く側に回る。これってこうなんじゃない?って言うんじゃなくて、はじめに一回共感したり受け止めるっていうか。受け止めてくれる人がちゃんといるんだよっていうのを伝えることができたら、みんな心を開いて話してくれるんじゃないかな。 そして、自分が周りの話を聞いていれば、周りも聞いてくれるようになる。僕は実はもうすぐイギリスの大学に進学することになっていて、NICを離れてしまったらどうしよう、という不安を持つこともあったんですが、最近、同期のメンバーと不安な時は電話で話したりもしていて、そういうコミュニティ作りは一人でも始められることだし、NICの外に出てもできることだと感じられるようになりました。」

大谷:すごいなあ。場が変わると、そこでできていたことができなくなっちゃうんじゃないか?と思うのはすごく自然なことだと思うけれど、その環境は自分からつくることができるって思えるのは自分自身にとって大きな自信になるし、揺らがない軸の強さになるよね。その自信を持つことができるようになるってそんなに簡単なことじゃないように感じるけれど、今の環境で周囲とのコミュニケーションを通じて繰り返し自分に染み込んでいった感覚が、今、“できる”という実感をつくってくれたんだなとお聞きしていて思いました。

Text : 富田有為(Creative Studio koko)

Edit:大谷明日香(Creative Studio koko)